久しぶりに帰った実家は、思ったより普通でした。
玄関の匂いも、台所の音も、親の声も、昔とあまり変わらない。
だからこそ、言えませんでした。
「仕事どうなの?」
そう聞かれたら、言おう。
そう思っていました。
でも実際には、そんな都合のいいタイミングは来ませんでした。
正直に言えば、怒られるのが怖かったわけではありません。
たぶん、親は怒らない。
ただ、心配させるのが嫌でした。
自分の人生がうまくいっていないことを、親に伝える。
それは思っていた以上に重いことでした。
ご飯を食べながら、普通の顔をする。
テレビを見ながら、普通に笑う。
でも心の中ではずっと、
「言うか?」
「いや、今じゃない」
「でも今日言わなかったら、いつ言うんだ?」
そんな会議が開かれていました。
参加者は自分ひとり。
議題は重い。
結論は出ない。
そして議長は無職。
言えなかったことは、逃げだったと思います。
ただ、その逃げを簡単に責めることもできません。
失業したことよりも、
それを親に言えない自分の弱さのほうが、少しこたえました。
大人になったはずなのに、
実家に帰ると、どこか子どもに戻ってしまう。
その感覚がありました。
結局、親には報告できませんでした。
何をしに帰ったんだ、と言われればその通りです。
でも、たぶんこれも今の自分のリアルです。
失業しました。
でも、まだ終わったわけではない。
いつかちゃんと報告できるように。
できれば、そのときには少しだけ前に進んだ報告も添えられるように。
そう思いながら、実家を後にしました。
写真は、子供時代。
